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WEB BOOK : haluta 365

haluta 365 REGULAR BOOK

LIVING, LIFETIME BEST

自分史上最高の、居場所のつくりかた

vol.15

February
,25,2017

巣ごもりの日々 #2 『棲家に光を採りこむ。』

posted by ASAKO FUJINO

冬の雑木林を散歩していると、よく動物たちの棲家を見つける。
地面に一定の間隔をもって開いた2つの穴は、野ネズミの家の入り口。
日当りのよいこんもりとした薮のなかにあるのは、大家族のキジたちのねぐら。
木こりのオットが働く険しい山中まで行けば、迂闊には近づけないツキノワグマが冬眠する巣穴も見つかる。
冬眠する者もしない者も、みな、厳しい冬が来る前に、きちんと自分たちの手で暖かい棲家を整える。

 
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「家の作りようは夏を旨とすべし」と兼好法師は言うけれど、その教えは必ずしも山の家には当てはまらない。
標高1100mの山小屋暮らしは、やはりなんといっても冬場をいかに快適に過ごせるかにかかってくる。(そういう意味では、人間よりも動物の暮らしに近いところがある。)
築30年を超す木造のわが家も、当然寒い。朝起きると室内が氷点下だとか、調理油やシャンプーがすべて凍るだとか、水滴のついた窓は凍ったまま、冬の間、”開かずの窓”になるだとか、屋内の寒さについて挙げだしたらキリがない。(そういう意味では、動物の暮らし以下か… 。)
薪ストーブや灯油ヒーターでせっせと暖めてみるものの、木製サッシ(おまけにガラスは一重)の開口部から、暖められた空気はどんどん逃げてしまう。

 

「寒さは気合いで乗り切るもの!」と諦めつつ、歯を食いしばっていた何年目かの冬、雑誌で見かけたある山小屋に目を奪われた。
そこに写っていたのは、光あふれるサンルーム。
室内の延長のように作られたそのスペースは、冬の間のリビングとしてソファやハンモックが置かれ、窓外の風景はこちら同様雪景色だというのに、青々とした観葉植物まで並んでいる。
この手があったか!と、頭のなかに稲妻が走った。
興奮してオットに伝えたものの、はじめは「そんなお金はないよ」と一言のもとに却下。
躍起になってネットで色々と検索してみると、たしかにサンルームとはえ、一部屋を増築するようなものなので、出来合いのプランはどれも到底手が出ないものばかり。

 

それからも、雑誌を取り出しては妄想を繰り広げ続けていたあるとき、秋も終わりになって、だいぶ傷んできていたテラスデッキの床が抜け落ちた。
デッキを張り替えるにもある程度お金がかかるね、と相談しているうちに、ついにオットが「じゃあいっそサンルームにしてみるか」とつぶやいた。
2度目の稲妻がぴかり!
思い立ったが動きが早いのがこのオトコ。ざざっとコピー用紙に図面らしきものを描いたと思ったら、次の休みの日からさっそく、金槌を手に既存のデッキ部分を取り壊し始めた。

 

ここで「あれ?」と思われるかもしれないが、サンルームをつくる、イコール、そう、「DIY」。
誰かにつくってもらうのではなく、完全に自作するプロジェクトがあっという間に立ち上がってしまった。
これまでにも、風呂焚き小屋、ツリーデッキ、書店を兼ねた小屋など、毎年のように敷地内のどこかでDIYは重ねてきた。それらがちょうどひと段落したタイミングだったこともあり、いよいよ棟梁(オット)が動く気になったのだ。
しかし今回は、母屋の一部ともなる部分なだけに、これまでの遊び半分のDIYとは話が異なる。待望のサンルームとはいえ、楽しみな分、ほんとにやれるの?と不安も大きい。

 

そんなこちらの不安もよそに、ペラペラのスケッチのような図面だけを頼りに、ざくざく作業を進める棟梁。
1階2階のデッキを、基礎と柱だけ残して壊したところに、あらためて大引を渡し、根太を張る。
柱と1階屋根の梁まで出来た時点で雪が降り、作業はいったん中断。
この冬の間に、友人・知人の元を訪ねて、使わなくなった古い窓やドアなどの建具を調達。
さらに、サンルームにとっていちばん重要な光を採り入れる天窓の素材を、あれこれ検討する。
サンルームを考え始めた当初から、いちばんの心配事は、冬場の落雪だった。
北軽井沢は、北陸のような豪雪にはならないものの、気温が低いため、積もればそのまま氷となって積み重なっていく。たとえ数十センチでも、塊となった氷が屋根から落ちればものすごい衝撃となる。
そのため、ガラスは危ないので、天窓には厚手のポリカーボネートを使うことに。ポリカも厚みのあるものになると値段が張るが、ここはサンルームの肝となる部分、覚悟を決める。
春が来て、雪融けとともに、ふたたび工事開始。
1階2階ともに勾配をつけた屋根をかけ、ポリカパネルをはめこみ、壁板を張って建具をつけ、床板を張り、塗装をする。
ものすごくざっくり書いてしまったが、それなりに大作業ではある。
とはいっても、秋と春、あわせて1ヶ月半ほどの工期で、1階と2階、ふたつの(夢の!)サンルームができてしまった。なんでも手を動かし始めれば、形になるものだ。

 
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棲家にサンルームが加わったことで実感するのは、当たり前のようだが、「光」の力だった。
暮らしのなかに、自然の「光」が降り注ぐ場があること。特に、長く厳しい冬を過ごす者にとっては、その影響力は絶大だ。
ストーブでせっせと暖めても15℃行くか行かないかという室温が、晴れていれば、この部屋では午前中のうちにあっという間に25℃を超えてしまう。(冬の間、何日もかけて部屋干ししていた洗濯物だって、あっという間に乾いて嘘のようだ。)
太陽熱や温度といった実質的なありがたさに加えて、見た目に「そこに光がある」ということだけで、閉じこもりで沈みがちな冬ならではの心もとなさが、パッと明るくなる。
何をするでもなく、天窓からの青い空と枯れた梢を見上げているだけで、長い冬も悪くないな… なんて気分にもなれてしまう。(人の心持ちなんてカンタンなのだ!)
意外だったのは、雨の日。天窓を打ちつける雨の粒を眺めるのは、水溜りを地面の下から見上げているような不思議な気持ちになって、雨音とともに、いつまでもそこに居たくなる。
サンルームで過ごすようになって、庭にこんなにたくさんの種類の鳥たちが来ていることにも、初めて気づいた。

 
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家のなかでありながら、ほんの少し外界の自然のなかに飛び出したような、宙ぶらりんな凸スペース。
ぬくぬくしたまま、自然光や風景を享受できるサンルームは、軟弱インドア派にとって最高のオアシスだ。
動物たちの巣穴と較べてはバチが当たるかもしれないが、これもひとつの冬の棲家の整え方じゃないか、と、威張ってみたりしている。

 
 
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△予想はついていましたが、2階のサンルームは、わが家の女王専用部屋となりました。。

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posted by ASAKO FUJINO

2004年より浅間山のふもと・北軽井沢に移住。週末のみオープンするブックカフェ「本とコーヒー麦小舎」を営みながら、暮らしまわりや地域文化などを中心に編集・ライター業に携わる。毎年秋に北軽井沢で行なわれる本のお祭り「ブックニック」主催。猫1犬1夫1と暮らす。

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