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FUN, MY SECRET SPOT

いちばん秘密にしたかった信州ガイド

vol.18

May
,07,2017

仕事場の営み #4

posted by TAKASHI KOBAYASHI

鳥の声

朝の空気

光の差す方

夜の静けさ

 

あの人は、ここでなにを
みているのだろうか

 

きっと、あの人だけの秘密がある

 

「 仕事場の営み #4 」

ヤマとカワ珈琲店

川下康太さん

長野

 

=====

 

kawashita_01

ノートに書かれた焙煎の記録。

「ヤマとカワ珈琲店」店主
川下康太さんの毎日はここからはじまる。

 

夏も冬も、毎朝6時ともなれば、
お店に来て、焙煎機に火をつける。

 

温まるまでの一時間、
康太さんと焙煎機は、ゆっくりと
一日のはじまりを迎える。

kawashita_02

「冬は、ひと晩のうちに室温が
ぐっと下がることもあるから、
焙煎機が温まるまでは、
ストーブの上で生豆を温めたりしてるんよ。
その間に掃除をしたり、事務仕事をしたりね。

 

2~4回焙煎したら、お昼ご飯を食べて、
13時にお店を開ける。そんな感じかな」

kawashita_03

焙煎機に豆を入れる(さあ、いよいよ!)。
ノートに記録を取り、時間を計り、
焼き加減をうかがう。
焙煎機から目が離せない。

 

「機械やから、勝手にやってくれると言えば、
そうなんやけど、
豆の温度の上がり具合とか、水分の抜け具合を
ちゃんと見るようにしてるんよ。毎日、違うからね」

kawashita_04

その日の気温、
焙煎機の温まり具合、生豆の温度など、
ありとあらゆる条件を読んで、
なるべくブレがないように、コツコツ記録する。

 

迷った時には、これまでの記録が味方する。

そうして、理想の味に近づけていく。

 

誰に言われたわけでもなく、
このやり方を康太さんなりに考えて、
続けてきたそう。
康太さんは嬉しそうにつぶやく。

 

「飽きない仕事やね。
意外と、こういう仕事が好きなんやなって
だんだんわかってきた」

kawashita_05

20代の頃、大阪と名古屋で営業職のサラリーマンを
していた康太さんは、30代を手前にして、
生活を変えようと思った。

 

何かが嫌になったとか、諦めたとかではなく、
自分の仕事をつくろうと決めた。

 

「僕の場合は、たまたま色々なきっかけがあって、
珈琲屋をはじめたんやけど、
もうやめられへんね(笑)。

この仕事は、天職とか性格に合ってるとかは
よくわからんけど、好きな仕事やよ。
 
それに、焙煎の仕事は
時間の融通もある程度きくから、
思い描く暮らしに合わせた働き方ができる。

 

仕事って、色々と変化していくけど、
目の前にあることをとにかく
やっていくだけなんやろうね」

kawashita_06開業当時から、康太さんが口にしているのは、
「ふつうに、手軽に、家で楽しんでもらえる珈琲でありたい」
ということ。

 

変わることのない理想の珈琲と
豆を焼く毎日。

 

そして、繰り返しの毎日の中で、
少しずつやり方を変えていく。

 

2014年に「喫茶ヤマとカワ」を
オープンしてから、メニューや営業時間など
色々なことを試行錯誤してきた。

そして今年の春からは、豆売りのみを行い、
これまで以上に焙煎に専念することを決めた。

 

それが、今の「ヤマとカワ珈琲店」。

 

きっと、これからも
変わらないために、変わり続けていく。

kawashita_07

そして、康太さんの暮らしも変わった。
家族が一人増え、子どもとのかけがえのない時間が
生まれた。
 
「子どもの存在は大きいね。
仕事に暮らしを合わせるのではなく、
暮らしに仕事を合わせるようになった。

そんなこと、会社員やってた頃は
考えもせんかったけど。
 
去年から家族や友達と畑をはじめて、
自分たちで食べるものは
なるべく自分たちで作るようになった。
いつか、子どもが大きくなった時に、
僕ら親の姿を覚えていてくれれば、ええね」

 

“仕事に暮らしを合わせるのではなく、
暮らしに仕事を合わせる”

 

康太さんの珈琲には、毎日の暮らしが詰まってる。

 

繰り返しの毎日に、康太さんなりの答えがあって、
誰かに決められるのではなく、
暮らすことの意味を自分なりに考える。

 

他の誰かではなく、
対峙する自分の理想に向かっていく。

 

kawashita_08

 


(いつだったか、とある和尚さんに
「『有難う』の反対は何でしょう?」と問われた。
 

➖➖➖その答えは『当たり前』と。

でも、本当は「当たり前」に繰り返される毎日が
「有難いこと」であって、表裏一体なんだと思う)

 

朝起きて、コーヒーを飲む。
今日のはじまりに考えごとをする。
自分の調子がわかってくる。

 

そんな時、康太さんが意図しているであろう味に
気がつくと、「うん、うん」と頷きながら
嬉しくなる。

 

珈琲豆を焼く康太さんの毎日を思い浮かべながら、
「ありがとうございます」と密かにつぶやいてみる。

 

-INFO-

 

『ヤマとカワ珈琲店』
http://yamatokawa.com
 
380-0815
長野市鶴賀田町2252
080-9283-9609
 
営業時間:13時~日没まで
定休日:水曜・木曜

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posted by TAKASHI KOBAYASHI

2011年、大学3年の冬に長野市「旧シンカイ金物店」を友人と改修。生活拠点として、蚤の市やライブ、食事会などを企画。中学校教諭退職後、渡米。帰国後、アパレル販売員を経て、執筆、空間演出、広報などの経験を積む。フードケータリング「Hello,FOLKS!」主催。

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