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FUN, MY SECRET SPOT

いちばん秘密にしたかった信州ガイド

vol.19

June
,29,2017

仕事場の営み #5

posted by TAKASHI KOBAYASHI

鳥の声

朝の空気

光の差す方

夜の静けさ

あの人は、ここでなにを

みているのだろうか

 

きっと、あの人だけの秘密がある

 

「 仕事場の営み #5 」

 

平野珈琲

平野 仁さん

長野

 

=====

 

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夕暮れの碧い空に包まれて、

民家の間に、ポツリと灯りがともる「平野珈琲」。

 

朝8時30分から夕方6時までの

営業を終えた頃、

店主の平野仁さんは、ここで一人焙煎機を回す。

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仁さんが「平野珈琲」をオープンしたのは、2016年の年末。

それまで、札幌でゲストハウスとカフェの立ち上げを

経験してきた仁さんは、結婚と子どもの誕生がきっかけで、

長野に住むようになり、ここにお店を開くに至った。

 

珈琲の焙煎具合を確かめながら、

軽やかで、やさしい口調の仁さんが一言。

 

「ここは、ゆっくりと過ごしてもらえる

“街の休憩室”みたいな場所に

できたらいいな」

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仁さんの想いそのままに、

「平野珈琲」はなんだかとても心地いい。

 

民家の間を抜けて、

遠くの方からやってくる風。

 

スピーカーからはJAZZ。

 

一つのテーブルを囲む1階席と、

そっと一人にさせてくれる2階席。

 

ネルドリップの深煎り珈琲は時間を忘れさせてくれる。

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旅先で見つけた

路地裏の喫茶店のような、

初めて来たとは思えない

不思議な懐かしさを感じさせてくれる。

 

仁さんにとって大切なのは、場所。

そんな話をしてくれた。

 

「20代前半の頃、喫茶店によく行ってたんだよね。

そこで、珈琲を飲みながら

読書をしたり、気持ちのリセットをしたり。

 

その時は自分のしんどい状況もあって

喫茶店で過ごす時間にものすごく助けられていた。

 

だから、珈琲の味はもちろん、

“珈琲のある時間”みたいなものが好きなんだと思う」

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そんな仁さんが珈琲の焙煎を始めたのは、

ゲストハウスを開業したのちに、

ブックカフェを開いた札幌時代のこと。

 

お店に来てくれた人に、

どうしたらもっと満足してもらえるかと考えた結果、

自分で焙煎して珈琲を出してみようと思ったそう。

 

「当初、珈琲豆は卸業者から仕入れていて、

豆の種類や焙煎度など、選べる選択肢が多くなかった。

だから、どうしたら今以上に、もっと珈琲を美味しくできるか。

お客さんにもっと満足してもらえるか、考えていて。

 

そしたら、たまたま縁があって、

この焙煎機を作っている職人さんと出会って。

 

焙煎しているところを見せてもらっているうちに、

これは時間がかかるかもしれないけれど、

自分でやってみたいって思うようになったんだよね」

 

こうして、珈琲を巡る日々がはじまった。

様々な人に話を聞いたり、

喫茶店のマスターに焙煎した豆を持っていき

試飲してもらったりしながら、

自分なりに美味しい珈琲を探していった。

 

「でもね、最終的に思ったのは、

みんなそれぞれ違う焙煎機を使い、

それぞれの焙煎方法でやっているから、

どれが正解とかあるわけじゃなくて。

 

自分はこの焙煎機と向き合って、

一番いい仕上がりを探すしかないなって」

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何かを探して、いくつもの旅路を歩く中で、

自分にとって大切なことに気づいていく。

そんな旅の面白さにも似た毎日だったのかもしれない。

 

実は、札幌でゲストハウス、

そして旅をテーマにしたブックカフェを

営んできたくらいに、根っから旅好きな仁さんは、

かつて、「あの場所で」というコラムを札幌の地元紙で

連載していたという。

 

「旅先のとある場所での出来事を

インタビューする連載でね。

 

限られた文字数では収まらないくらい、

人それぞれの人生があって、紆余曲折があって。

 

数々の過去を聞くほどに、

目の前のことから学ぶ大切さを知るようになった。

 

どんなことも、

無駄なことなんてないんだよね、きっと」

 

出会ったものごとから、何かを学んで歩いていく。

何でもないように思えたかつてのことが、

きっと大切な何かに変わっていく。

 

(いつの日か、「平野珈琲」のキッチンに、椅子を並べて、仁さんの話を聞いたこの日のことを、ふっと思い出すのかもしれない。旅の断片のように)

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取材の翌朝。

かつて一緒にお酒を呑み交わした友人が偶然現れて、

一緒に時間を過ごすことになった。

 

珈琲を片手にゆっくりと。

互いの時間が交差する、不思議な時間だった。

 

仁さんが大切にしていることって、きっとそういうことなんだと思う。

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-INFO –

『平野珈琲』

https://twitter.com/hirano_coffee

 

長野県長野市立町981

営業時間

8:30〜18:00(17:30 L.O.)

定休日 火・水

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posted by TAKASHI KOBAYASHI

2011年、大学3年の冬に長野市「旧シンカイ金物店」を友人と改修。生活拠点として、蚤の市やライブ、食事会などを企画。中学校教諭退職後、渡米。帰国後、アパレル販売員を経て、執筆、空間演出、広報などの経験を積む。フードケータリング「Hello,FOLKS!」主催。

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